【食物栄養科かわらばん】「合理的配慮」を学ぶ

食物栄養かわらばん

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
学生部広報部 澁谷さん

戸板女子短期大学は、2年制大学で在学期間が短いので、学生は入学したときすでに視野の中に社会人の自分の姿を思い描いています。従って、大学での学びも、社会人としての自分を意識したものになります。食べ物を通してお客様と接する仕事をしたいと考えている学生の多い食物栄養科で、合理的配慮について学びました。

 

1. 障害者差別解消法

いきなり硬い話になりますが、障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)という法律が平成28年4月1日から施行されています。6章26条よりなる法律です。2006年の第61回国連総会において「障害者の権利に関する条約」が採択されたので、日本国内でもこの条約にきちんと従うために作られた法律です。障害の有無にかかわらず、人はお互いを認め合い、手を取り合って生きていくことの大切さを私たちは知っていたはずですが、この法律ができた機会にもう一度確認し、行動していきましょうと決意を新たにするための法律です。

 

2. 合理的配慮

(1) 合理的配慮とは
私たちが勉強した「合理的配慮」については、障害者差別解消法の第1章第5条に書かれています。「合理的配慮」とは「障害のある人が、障害のために生活上の不都合を感じている時、役所や会社はできる範囲でよいから、それを取り除く協力に努力を怠らない」という事です。当たり前のことのようですが、それができていないからこそ、この法律が作られたのです。お金をかけて改築することだけでなく、会社やお店を訪れた障害のある人と直接接する店員、事務員などが、適切な対応ができるように教育することも求められています。

 

(2) 対象となる障害者は?
障害のある人とは障害者手帳を持っている人だけではありません。心や体の働きの不都合さから、日常生活に制限を感じている方すべてが対象です。
特に持病もなく健康な方でも、高齢になると様々な動作に支障をきたし、日常生活の中でいつも不都合さを感じています。このような方たちも合理的配慮の対象となります。

 

(3) 合理的配慮の例
① 電車の乗り降りの際、駅員がスロープを用意して補助する
② 会合などにおいて障害の特性に応じて適切な席を決めたり、対応したりする
③ 障害のある人から求められたら、代筆して差し支えない書類なら代筆する
④ 情報を伝えるとき、絵やタブレット端末などわかりやすいものを使って説明する
など、いろいろあります。「合理的配慮」などと漢字を並べられると構えてしまいますが、私たちがいつも心がけてきたはずのことばかりです。心がけていたはずなのに、実践できていなかったから法律ができたのだと、きちんと受け止めなければなりません(図1)。

 

 

 

3. ロービジョンという障害を持っている人に食事を提供します

(1) ロービジョンという障害について学びました
ものを見る力の障害ですが、「見えない」ではなく「見えにくい」という障害です。高齢になると、白内障、加齢黄斑変性症、脳梗塞などの病気が原因で誰でも持つ可能性のある障害です。ロービジョンの方に図2のようなお食事をお出しすると、お膳の真ん中しか見えないとか、お膳全体がまぶしく光って見えづらい(図3)などの見え方をしたり、一部分が見えないとか、全体がぼやけて見えるなど、「これから食事をしよう」というときにとても不都合な見え方をします。
ロービジョンの方は全国に144万9千人居るといわれています。国民80人に1人です。70歳以上の高齢者に限定すると34人に1人になります。大きなファミリーレストランでは1日に300~400人のお客様が見えるそうなので、1日に3~5人のロービジョンのお客様の接客をしていることになります。
そして、様々の障害の中でロービジョンが大変不都合なのは、全く見えないわけではないので、周囲から視覚障害を持っていることを理解していただきにくい点です。「見えているんだからいいじゃない」と言われることまであります。

 

 

 

(2) ロービジョンに対する合理的配慮
① 物を使った工夫:
a. 図4のように内側が赤いお茶碗を使うだけで、ご飯がとても見やすくなります。

 

b. 12時の位置においてある醤油さしは、傾けるだけではお醤油は出ず、傾けた後てっぺんの白いところを押すと0.4mlだけお醤油が出る優れものです。0.4mlはお浸しにちょうど良い量です。
c. 2時の位置の鯛のお刺身と大根のつまも、器の内側に色がついていたら、もっとたかりやすかったと思います。
② 心遣い:お食事をお出しするときに、どこに何があるかをご説明することが重要です。その際、「どこ」を時計の文字盤に例えて説明するルールをクロックポジションと言います(図5)。図2の例ですと、12時に醤油さし、2時にお刺身、4時にお味噌汁、5時に刺身しょうゆの入ったお小皿、8時にご飯、10時に納豆、中央にお浸しです。

 

 

③ 全く見えないわけではないので、文字情報も大切です。その際、背景と文字の色、文字のフォントが重要です。黒い背景にゴシック体の白い文字の組み合わせが最も見やすいです。お品書きはこの形で掲示すると良いですね(図6)。

 

 

4. 飲食店における合理的配慮例

お読みいただいている方々の中でご家族が障害をお持ちの方。以下に書いてあることは、どこのお店でも義務づけられている配慮です。遠慮せずにお店の方に頼んでください。笑顔で引き受けてくださるはずです。お願いすることでお店の方とお客さんの間に繋がりができ、より楽しい時間を過ごせると思います(図7)。

 

 

 

 

豊島裕子 教授
 

 

東京慈恵会医科大学 医学部医学科卒業
博士(医学) / 日本内科学会認定内科医 / 日本神経学会神経専門医 / 日本脳卒中学会専門医 / 日本生理学会認定生理学エデュケーター
神経生理学、特に自律神経生理学を専門に研究し、ストレス科学を得意としています。栄養学領域では応用栄養学が専門。

戸板女子短期大学では、応用栄養学/応用栄養学実習/運動生理学/栄養士実践演習/給食管理実習/食物栄養科ゼミナールを担当。

 

 

 

本件のお問い合わせ・取材に関しては

戸板女子短期大学 入試・広報部 澁谷まで

TEL03-3451-8383

 

 

学生部広報部 澁谷さん

職員
学生部&入試・広報部

戸板女子短期大学 学生部、入試・広報部として、企画、デザイン、WEB、マーケティングを担当。Youtuber。 戸板女子短期大学のニュースや記事、田町や三田周辺の情報を得るために、いつもアンテナを張り巡らして集めています。