【食物栄養科かわらばん】ネギを食べる

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大学近くの河津桜は満開です。しかし、新型コロナウイルスは、猛威を振るっています。今回は「食事と健康」について少し考えてみます。

1. 応用栄養学という学問

私が大学で担当している応用栄養学という科目は「健康な人が病気にならないために何を食べたらよいか」「健康な人を病気にさせないために何を食べさせたらよいか」を考える学問です。おいしく盛り付けがきれいなことも重要ではありますが、厚生労働省から発表される「日本人の食事摂取基準」という文書を参考に、世代別に必要な栄養素、食べ易く安全な食品の形態などについて学びます。
日本人口の28.4%(2019年9月現在)を占める高齢者は年とともに、噛む力や飲み込む力が弱くなり消化・吸収力も低下していきます。高齢者の健康と機能を守るためには、含まれる栄養素の量だけでなく、お食事の形態にも気を配らなければなりません。飲み込み易いようにミキサーにかけたり、噛まずに食べられるようにペースト状にしたりと、この際見た目は置いておいて、食べ易く安全な食事を用意しなければならないこともあります(図1)。応用栄養学では介護食の実際についても学びます。健康を守る食物栄養科から、今回はネギを食べる話をお届けします。

2. お食事で免疫力アップ
前回は「ネギを首に巻く」おばあちゃん健康法について考えました。ネギの香りの素のアリシンが鼻粘膜から吸収されて副交感神経の働きを高め、ウイルス感染症の予防・治療を担当している「白血球s」を元気づけるかもしれない。だから、おばあちゃんの言いつけを守っていたら、風邪をひいても軽くて済むかもしれないと考えました。
食べて健康維持する応用栄養学の世界から、「食べてウイルス撃退」について考えてみましょう。首に巻いて免疫力をアップできるネギに関しては、食べても風邪に効くと昔から言われています。「風邪かなと思ったら、ネギをたくさん入れたうどんを食べましょう」などよく聞きます。ネギを食べたら免疫力はアップするのでしょうか。それではネギを食べた時の副交感神経機能の変化を、首に巻いた時と同じく心電計で測ってみましょう(2019年11月実験)。

(1) 研究のやり方
① 使ったもの
a. ネギメニューでご紹介する「ネギを極めるネギステーキ ネギ塩ソース」  1人あたり2人前
b. ホルター心電計(病院で不整脈や狭心症の検査に用いる小型24時間記録用心電計)(前回と同じもの)
② やり方
首に巻く実験の時と同じように、胸に心電計をつけて、ネギステーキを食べます。ネギステーキはネギをさっと焼いただけなので、中がレアでなかなか辛味が強く、ビールのあてには最高なのですが、食べる速さは少しゆっくりになります。ミネラルウォーターを飲みながら、30分ほどで完食しました。

(2) ネギを食べた効果を見てみましょう
首に巻いた時に比べて副交感神経機能はすぐにはアップしませんが、緩やかに上がっていくのが分かります。そして、食べ始めてから1時間くらい経つと首に巻いた時より高い効果が出ています(図2)。
ネギは食べても副交感神経機能をアップさせ、その結果「白血球s」を元気づける可能性がうかがえました。そして、食べたときは首に巻いた時より即効性はないけれど、長く効いているようです。先人の言うように、ウイルス性の風邪をひいてしまったときは、ネギを食べて暖かくして寝ていれば、重症化させずにすむかもしれません。

 

 

3. 風邪をひいてしまったあなたに、だるくても簡単にできる「応用栄養学的ネギメニュー」
それでは、風邪をひいていてだるくて何もしたくない時でも作れる簡単ネギメニューをご紹介しましょう。

 

(1) ネギを極める ネギステーキ ネギ塩ソース
ネギの辛みがピリッと効いて、ビールのあてに最高。ネギだけで作る侘しいメニューのようですが、捨てがたいものがあります。今回の実験で大学生の協力者の皆さんに食べていただきました。ミネラルウォーターを飲みながらでしたが、皆さん楽しく食べてくださいました。(図3)。

① 材料(1人分)
a. 長ネギの白いところ     1本
b. ネギ塩ソースの調味料
塩            少々
ごま油          少々
c. サラダ油          小さじ1/2
② 作り方
a. ネギ1/2本は5cm長さに切ります。残りの1/2本は小口切りにします。免疫アップを狙うなら、切った後水に晒しません。
b. 5cm長さのネギは、サラダオイルをひいたフライパンで、表面に焦げ目がつくまで中火で焼きます。柔らかくなるまで焼くと甘くておいしいのですが、免疫アップを狙うときはアリシンが加熱で減ってしまわないようにミディアムで。
c. ネギ塩ソースは、小口切りにしたネギをb.の調味料で和えます。
d. 焼きあがったネギに、ネギ塩ソースをかけて出来上がりです。

 

 

 

(2) だるいあなたのための極超簡単ネギスープ
だるくて、食欲もない、熱もあるみたい、ご飯を作ってくれる人はいない、そんな時はこれを飲んで寝てしまいましょう。体が温まって、よく眠れます(図4)。
副交感神経は眠っているときに体を修復するために働く神経です。大泣きしている赤ちゃんは、「眠いのに寝付けなくていらいらする」を含め、何か不都合を感じているので交感神経機能亢進状態です。泣き疲れてうとうとしだしたとき、足の裏がほんのり暖かくなります。その時赤ちゃんは副交感神経機能がアップした状態です。あなたも、ネギスープを飲んで、副交感神経機能をアップして、足の裏をほんのり暖かくして、ぐっすりおやすみください(図5)。

① 材料(1人前)
a. 長ネギ        1/4本
b. 顆粒コンソメスープ  小さじ1
c. 水          180ml
d. こしょう か ごま油   少々
② 作り方
a. 長ネギは3cm長さに切ります。
b. 水にスープの素とネギを入れ沸騰したらそのまま弱火で20分ほど煮ます。よく煮てしまうので、アリシンが減ってしまいますが、柔らかく煮たほうがおいしいです。
c. カップに注ぎ、最後にこしょうを振ると洋風に、ごま油を垂らすと中華風に楽しめます。
d. もう少し栄養価の高いものを食べたいと思うときは、卵でとじてもよいです。火からおろす前にコンビニの温泉卵を落とすのも簡単で栄養価を上げるよい方法です。

 

 

 

 

 

豊島裕子 教授
 

 

東京慈恵会医科大学 医学部医学科卒業
博士(医学) / 日本内科学会認定内科医 / 日本神経学会神経専門医 / 日本脳卒中学会専門医 / 日本生理学会認定生理学エデュケーター
神経生理学、特に自律神経生理学を専門に研究し、ストレス科学を得意としています。栄養学領域では応用栄養学が専門。

戸板女子短期大学では、応用栄養学/応用栄養学実習/運動生理学/栄養士実践演習/給食管理実習/食物栄養科ゼミナールを担当。

 

 

 

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